Ⅰ.
「あけぼの一寸」×「黒龍 純吟」
◇黒龍酒造「黒龍 純吟」
文化元年(1804年)創業。仕込み水「九頭竜川」の伏流水は、昔から日本三名山のひとつとして仰がれている霊峰白山山系の雪解け水を源とする。
穏やかで優しい、上新粉の月見団子のようなふくよかな香り。
味わうと、キリっとした辛さが広がりハッと消える。
酸味や甘味、苦味のバランスも良く飲みやすく、主に味噌料理との相性が良いとされる食中酒。
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はっとする
散り霞む 白を掬う
曙光に見ゆる
泡沫の微視に
浮世を後景す
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立ち昇るような吟醸香ではなく、重心の低い香りは、空の対比の水面を泳ぐイメージと重なり、芭蕉の推敲した白色はハッとするような白魚の白を想起し、後味のキレと重なる。
実生活の中にたたずむ、繊細な美しさ。
Ⅱ.
「松籟」×「君萬代」純米吟醸
◇田中酒造店「君萬代 純米吟醸」
利根川の砂礫層を通ってくる豊富な伏流水に恵まれ、明暦元年(1655年)より日本酒を醸造している歴史ある蔵であり、取手市に唯一残る自家醸造蔵。
『君萬代』純米吟醸は、契約栽培する地元取手産のお米だけを用い、地酒を極めるべく挑戦し続けているお酒。
つきたてのお餅みたいなふくよかなお米の香りと、炊きたてのご飯みたいな柔らかな旨味と柔らかな口当たり。
懐かしいサクマドロップスのハッカみたいな柔らかな爽やかさと、牛乳寒天みたいなミルク感もほんのり併せ持つ。
様々な味わいがそれぞれに抑え合いつつ引き立て合いつつ丸く在る。
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一炊の夢
松の梢のそよぎに潜む
睡夢の慫慂
さるままに沈潜する
潜る
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シューシューと湯沸くような音の揺らぎに誘われ、見たことのないうつつを夢見るミノタウロスのように、炊き上がる米の音と香りに包まれる。
全体に描かれた様々な白色は、味と香りの中に登場する様々な白色と重なる。