

Ⅰ.
「2024 リアル・リペル 藏 隆幸 作品展 vol.5」×「左大臣」純米大吟醸
◇大利根酒造「左大臣」純米大吟醸
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作為的に不作為を操るパラドックスを追求して表現された世界
偶発を必然に導く
人に制御されない作用を人の手で掬い取り象る作業
作品に位置づけられるところまで
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会社としての創業は明治35年だが、1739年には酒造りが行われていた記録がある群馬県沼田市の大利根酒造。群馬県環境GSの認定を受けて環境問題に取り組み、地域の環境教育にも携わる。
清廉な白い花のような香り。例えるなら百合やシクラメン。
口に含むとベルベットのような舌触り。とろりと滑らかで、上品な、和紙のような風味と透明感ある甘味旨味をそっと縁取る苦味。そして、ふわあっと消える。
環境問題にも真摯に取り組む、蔵人僅か二名の小さな酒蔵。
自然によって造られた我々は、自然を操って我々を造る世界を造ろうとする。
人智の及ばない不作為の自然に挑戦する。
そのコンセプトと深い味わいを重ね合わせました。
Ⅱ.
「時空の階層」×「ふかもり」純米吟醸
◇山内酒造「ふかもり」純米吟醸
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永遠と一人
流れる水はとどまることなく
その世界がある限り永遠に流れ続ける
私の世界は私の死と共に終わるが
この一日は永遠
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創業年不明。鎌倉から落ち延びた武士がこの山奥に入り、刀を捨てて百姓になり酒造りを始めたと言い伝えられているらしい。「山内」は北鎌倉の地名。
僅か50石の生産量。日本一小さな酒蔵と言われている。
枇杷や柿のようにしっとりと、清流の畔に咲く菫のように上品な香り。
じっとりと、熟した柿のようなふくよかさとコクが舌の端まで染み渡り、すぐにキリキリとした苦味が包み込み、さらりと消える。
生命的な流れ。流れる血管と血管壁のようだった。深い森の中で流れる水のようでもある。
とめどなく流れる水は、世界が終わるまで流れ続ける。
人にとってそれは死だ。
深い森のように奥へ奥へと、じりじりと血肉に染み入るようなコク。
最小単位で醸造される日本酒の、広大な味わいとイメージを重ねました。