
虚無の色
世界の境界に自分が在るのか
自分の境界が世界を成すのか
皮膚は血肉を覆い衣服は皮膚を覆い
湿気が衣服を覆い他者が湿気を覆う
境い目が溶け出した私は透明になる
なによりも黒い透明になる
「wash.wash」×「山の井」白 おりがらみ 生
貞享5年から元禄元年に改元された1688年に創業した江戸時代からの仕込み蔵。全国でも屈指の超軟水を使用した、やわらかく丸いきれいな酒を特徴とする。
冬は雪深い南会津の、寒い日にはマイナス20℃以下にもなる極寒の土地で醸される綺麗な酒質。山の井は、飲む人の感じるままに味わってほしいとの想いからスペックは非公開。
レモン水のようにクリアな透明感にピリピリとした酸味と苦味。おりがらみの優しい甘さと、後味にふわりくゆる米の旨味。
【PAIRING COMMENT】レモンの雫が水に溶け込むように、自己と世界の境い目が溶け出す感覚と、その透明感を重ねました。また、境い目が曖昧になるということは、逆説的ですが世界から剥離されるということでもあり、その希望と絶望が表裏一体の感覚をピリピリとした酸味と苦味に重ねました。雪深い会津の暗く静謐で厳しい環境の中でこそ造られるその綺麗な透明感もまた、表裏一体の希望と絶望に重ねています。
だってなにもないんだよ
キミが倒れたら手を差し伸べよう
キミが笑うなら一緒に笑って
キミが泣いてたら涙拭くハンカチを
キミが怒ってたら近づかないでおくね
ボクはボクとしてここにいるだけだよ
なにか期待した?
バカみたい
「手を差し伸べる子」×「九尾」純米大吟醸 無濾過生原酒 四割八分磨
大正三年(1914年)創業。創業から現在まで、越後杜氏から南部杜氏へ、南部杜氏から下野杜氏へと醸造流儀を変えていきながら独自の進化を遂げている藏。
『九尾』は見る人によって姿を変える妖怪の名。毎回新しい試みから醸造される少数限定生産の銘柄。栃木県のオリジナル飯米「なすひかり」を醸した四割八分磨は、洋梨のように甘く金木犀のようにフローラルな香りを纏い、芳醇な甘さと酸味が金柑のシロップのよう。最後に、キリッと喉を流れてふわあっと消える。
【PAIRING COMMENT】イメージはオレンジ。オレンジの炎が世界を包む。オレンジを連想する香りと味わいが重なりました。オレンジの炎の中で、地に手をつく人に手を差し伸べる天真爛漫ボーイ。カワイイ顔して毒を吐く。天真爛漫ボーイは別になんでもなくて、こちら側が勝手になにものかにしているだけ。そんな鏡のような天真爛漫ボーイの存在もまた、九尾の狐に重ねました。